幹事のつぶやき 「景気回復,この道しかない」

景気回復,この道しかない

令和元(2019)年10~12月の国内総生産(GDP)は,名目で-1.2%,実質で-1.6%,年率では,それぞれ-4.9%と-6.3%であった。いわゆる「骨太の方針2019」以降,政府は消費税率引き上げに伴う需要変動の平準化に万全を期すと繰り返した。蓋を開けてみれば,前述の通りであった。しかし,政府は「駆け込み需要は前回ほどではなかった」(西村康稔経済再生担当相)と居直り,「経済環境をきめ細かく分析して経済財政運営に万全を期す」(麻生太郎財務相)と開き直ったのである。本当に万全を期していればこうならないであろうし,本当に万全を期してこうなったのであれば,そろそろいい加減,政権担当能力が疑われて然るべきであろう。

『経済政策で人は死ぬか?』でも指摘されたように,緊縮財政の対価は人命であり,生活である。確かに,消費は持ち直していると言えるデータもある。総世帯の対前年実質消費支出は,昨年6年ぶりに増加に転じた。しかし,その増減率は0.0%であった。そもそも前回の消費税率引き上げ後,平成26(2014)年から平成30(2018)年まで毎年マイナス成長であった。経済成長率や株価が元に戻ったとしても,失われたものは二度と戻らないと,主権者である国民は認識する必要がある。

我々のリーダーがどんな経済観を持っているかは,理学療法士の組織代表を選ぶ際に重要な要素の1つであるべきであろう。日本理学療法士協会の理念の1つめは,「尊厳ある自立」と,その「くらし」を守ることである。政治的な観点からは,それは単に身体機能や動作能力の話に止まらないと考えるのが妥当である。半田協会会長は「国家戦略として,社会保障財源として介護保険料の引き上げや消費税の引き上げが行われています」(未来へ発信!新たな理学療法戦略を探る)と解説したが,その国家戦略が正当であるかは大いに疑う必要があるように思われる。

主権者は国民である。我々国民は「景気回復,この道しかない」と言ったリーダーを選び,我々国民は万全を期して行われた(はずの)デフレ脱却という基本方針を支持し,我々国民は2度の消費税率引き上げを許容したのである。ジョン・アクトンは言った,「権力は腐敗しやすく,絶対的権力は絶対的に腐敗する」。主権者が国民なのであれば,適菜収氏が指摘するように「有権者は暴走する」し,腐敗するのであろう。昨今,リーダーの是非を論ずるに際して「〇〇〇〇の他に誰がいる?」と言われることがあるが,そう問いたくなる状況こそ,日本社会あるいはその組織の衰退の証左であるように思われる。この状況に慌てふためかず,立ち止まり,俯瞰することから始めるべきではないだろうか。(五)

「幹事のつぶやき」は広島県理学療法士連盟の幹事が,政治に関する解説,時事批評,エッセイ,書評などを気ままにお届けするものです。是非,感想をお寄せください(hiroshima-info@pt-renmei.info)。なお,本コラムは個人の見解であり,広島県理学療法士連盟の見解ではありません。(広島県理学療法士連盟情報発信・令和2年2月26日・第213号)