オススメ図書『マンガでわかる こんなに危ない!?消費増税』
消費税率10%への引き上げが昨年10月に実行された今,なぜ『マンガでわかる こんなに危ない!?消費増税』を取り上げる必要があるのでしょうか。その理由は,消費税率引き上げ後の報道から導き出されます。経団連は10%超への引き上げを政府に提言し,経済同友会の代表幹事は2025年には14%以上の税率が望ましいと記者会見で述べ,国際通貨基金(IMF)は2030年までに15%以上への引き上げが必要であるという報告書を発表しました。政府は,プライマリーバランス黒字化目標を撤回しておらず,更なる消費税率の引き上げが,政治課題の俎上に載せられるのは時間の問題と考えられるのです。
そこで,理学療法士に一読してもらいたいのが本書『マンガでわかる こんなに危ない!?消費増税』です。本書では,誰もがどこかで耳にしたことがあろう言説に対し,主人公の高橋あさみが言論で(?)立ち向かうという物語です。主人公が対峙する相手は,教育者,マスコミ,学者,経済団体,政治家,国際金融機関,官僚など,権力・権威を持つ人々です。そして,対話を通じて(?)消費税率引き上げに反対する仲間の輪を拡げていった主人公と仲間達は,日本を没落から救えるのか…。
本書の特徴は,次から次へと現れる相手に主人公が対峙し続ける展開です。これは,非常に現実的な示唆だと考えられます。「消費増税やむなし」あるいは「社会保障制度維持のためには必須」といった世論を覆すためには,長く,骨の折れる議論が必要になるのは間違いない。同時に,1人1人が向き合うことになるのは,面倒くさい,周囲に仲間がいない,1人が反対したって変わらないという現実との葛藤と,偉い人が言っているのだから正しいだろうという空気との葛藤だろうからです。そこには,知識の有無という壁があるだけではなく,「民主主義は面倒くさく,骨が折れるものである(そして間違える)」という歴史的事実が横たわっているのです。
我々理学療法士には,消費税率引き上げの是非を考える動機がまだあります。与党から国会議員を出そうとする協会・連盟にとって,消費税率引き上げは,自民党が与党である限り,向き合い続けなければならないであろう課題だからです。先の参議院議員選挙の組織代表候補は,消費税率引き上げについて「景気の落ち込みを危惧するところもありますが,やむを得ない」(JPTA NEWS vol.320)と述べました。本書『マンガでわかる こんなに危ない!?消費増税』は,そういった「思い込み」に疑いの目を向けるきっかけになるはずです。(五)
※「幹事のつぶやき」は広島県理学療法士連盟の幹事が,政治に関する解説,時事批評,エッセイ,書評などを気ままにお届けするものです。是非,感想をお寄せください(hiroshima-info@pt-renmei.info)。なお,本コラムは個人の見解であり,広島県理学療法士連盟の見解ではありません。(広島県理学療法士連盟情報発信・令和2年1月8日・第210号)