おすすめ映画『家族を想うとき』
安倍総理は,高齢者の就業機会の確保,自家用車による有償の運送サービス制度,複合観光施設の整備(統合型リゾートのことと思われます)を第201回国会の施政方針演説で改めて掲げました。規制緩和による労働力人口・供給能力の引き上げは,インフレ対策(デフレ圧力)です。消費税率引き上げについては言うまでもない。また,より多くの外国人が来日しやすくするためには,日本の物価や賃金を相対的に低く保つ必要があります。現政権はデフレ脱却を掲げて発足した政権でした。政権発足から7年経ち,今年に入って年頭所感でも年頭記者会見でも施政方針演説でも「デフレ脱却」に言及しなかったのは興味深い。その背景に,国民の多くがインフレとデフレの違いやその対策を意識していないことがあるのかも知れません。
そんな時世にイギリスから届けられたのが,ケン・ローチ監督による映画『家族を想うとき』です。ターナー家の父であるリッキーは,マイホームを夢見る「普通の」父親です。リッキーは正社員としての雇用を希望しましたが,それは叶わず,運送会社と個人事業主として契約し「独立」しました。この「独立」が惨劇の始まりだったのです。公式サイトには「家族の絆を描く感動作」と書いてありますが,いわゆるハッピーエンドではありません。確かに,妻アビーが運送会社の管理者マロニーに取った態度はおかしくも感動的でしたし,子供たちは不器用に,かつ純粋に家庭を守ろうとしましたし,ターナー家には強い絆があるように描かれていたと思います。しかし,マイホームの夢を捨てきれない父リッキーは泥沼に嵌っていく(かの様に描かれる)のでした。
そんなリッキーに怒り・悲しみ・やるせなさを覚える人もいるでしょう。一方,リッキーの自己責任だと言うこともできるかも知れません。しかし,家族を想い,マイホームを諦められない彼の想いを簡単に否定してしまってよいのでしょうか,ターナー家の状況の背景に,政治による政策選択があったとしたら。ケン・ローチ監督は「私たちがやらねばならないことはひとつ。耐えられないことがあれば,変えること。」と言いました。日本の場合,耐え難きを耐える日本の在り方が,悪い結果を招かないとは言えません。また,民主主義の下では,もっと悪い方向に変わる可能性も考えなければなりません。そうならないために必要なのは,理学療法士連盟に引きつけて考えると,インフレ対策とデフレ対策の違いのわかる組織代表候補を選ぶことではないでしょうか。我々は自分たちに見合った政治家しか輩出できないのです。(五)
※「幹事のつぶやき」は広島県理学療法士連盟の幹事が,政治に関する解説,時事批評,エッセイ,書評などを気ままにお届けするものです。是非,感想をお寄せください(hiroshima-info@pt-renmei.info)。なお,本コラムは個人の見解であり,広島県理学療法士連盟の見解ではありません。(広島県理学療法士連盟情報発信・令和2年2月12日・第212号)