幹事のつぶやき「よくあるご意見」

「よくあるご意見」

我が国の少子化が止まらない。厚生労働省によると,令和元年の出生数は86万4千人で,明治32(1899)年に統計を取り始めて以来,最も少なかった。ここで,少子化に関するよくあるご意見をご紹介する。「少し大きな話になりますが,私は今回の消費税財源を,少子社会対策として女性の労働環境改善に使うべきだと思います。(中略)そもそも「子どもをもうけられる環境とは何か?」から掘り下げてさまざまな課題を解決していくべきなのです。」(『リハビリ3会長鼎談:2019年消費税引き上げ その財源をどう活かすか』)。厚生労働省によると,少子化の原因は,非婚化(未婚化)と少産化の2つに分けられる。今回は,前者に注目したい。

『令和元年版 少子化社会対策白書』の内容は,興味深い。18〜34歳の未婚者で「いずれ結婚するつもり」と答えた割合は,平成27(2015)年調査では男性85.7%,女性89.3%であり,多くの若者が結婚を望んでいることが伺えた。しかし,現実はどうであろうか。平成29(2017)年の婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)は4.9と過去最低で,婚姻件数は61万組を切り,過去最低であった。50歳時の未婚率は,平成2(1990)年以降,上昇の一途にある。非婚化(未婚化)は確実に進行していると言えそうだ。

では,どのような状況になれば結婚するのだろうか。結婚を希望している未婚の20〜40歳代の男女では,「経済的に余裕ができること」が42.4%で最も高かった。ところが,平成9(1997)年と29年の所得分布を見ると,20歳代では150万円未満の割合が増加し,30歳代では100〜400万未満の割合が増加した。若い世代の経済的余裕があるとは言えないのではないだろうか。

政治の役割として,事実婚や同性婚を法的に認めるということが議論される。そのような寛容さは必要なのかも知れない。と同時に,普通に働き,暮らす人たちが経済的余裕を持てる社会にすることこそが,その国の政府,政治家の役割のはずである。その結果,多くの人が結婚し,子供を産み育てられる社会になる可能性が高まる。しかし,政府の少子化対策を「質・量ともに十分ではない」と答えた20〜50歳代男女の割合が,61.7%というのが現実である。そろそろ「そんな財源がどこにある!?」と聞こえてきそうである。さて,デフレ脱却をしていない状況で,家計消費の伸び率を抑制し,実質賃金を低下させ,逆進性が高く,デフレ圧力になる消費税率の引き上げを是認したのは誰なのか。その政策は本当に少子化対策になり得るのか。改めて考える必要があろう。これが「よくあるご意見」の威力なのである。(五)

「幹事のつぶやき」は広島県理学療法士連盟の幹事が,政治に関する解説,時事批評,エッセイ,書評などを気ままにお届けするものです。是非,感想をお寄せください(hiroshima-info@pt-renmei.info)。なお,本コラムは個人の見解であり,広島県理学療法士連盟の見解ではありません。(広島県理学療法士連盟情報発信・令和2年1月22日・第211号)