政府が月内に打ち出す総合経済対策のうち、医療・介護・福祉分野では、賃上げや物価高への対応と、2040年を見据えた「持続可能な医療体制」の構築を重点としていることが11日に明確となりました。対策の裏付けとなる令和7年度補正予算案は現在の臨時国会で審議されます。医療・介護・福祉分野は他の産業よりも賃上げの対応が遅く、生産年齢人口(15~64歳)の減少もあって人材採用が困難であり、サービスの提供が危機的状況にあります。
こうした現状から、まず医療サービスの対価として支払われる令和8年度の診療報酬改定を見据えて、いままで以上の賃上げのほか、建築資材の価格高騰などで施設整備が難しい医療機関に支援がされます。出生数の減少で厳しい経営を強いられる産科・小児科医療機関を救うため、安心して生み育てられる小児周産期医療体制が必要となっています。独立行政法人「福祉医療機構」による優遇融資の実施に必要な財政基盤も強化されます。2040年に持続可能な医療体制を構築するため、地域医療に必要な医療機関で適正だとされる病床数の確保に向けて、ニーズに応じられるだけの予算が確保されます。
また、災害に強い病院施設を設立し、救急医療の専門医や看護師がいち早く救助現場に向かえるよう、ドクターヘリを活用した救急医療体制の整備が急がれます。今後の訪問介護やケアマネジメントにあたる人材を確保するための取り組みも重要です。中小企業には、最低賃金の引き上げや設備投資にかかった費用の一部を助成する「業務改善助成金」を活用し、賃上げを支援していきます。
医療・介護のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めて、創薬を担う新興企業をサポートし、官民で資金を拠出する「革新的医薬品等実用化支援基金」のほか、「後発医薬品製造基盤整備基金」を通じて医薬品の安定供給が確保されていきます。がんや難病患者を対象に、「全ゲノム医療」を実施し治療につなげることや、がん検診の受診率アップも図られます。 国立成育医療研究センター(東京)にある「女性の健康総合センター」を中心に、女性ならではの健康課題と向き合い、特有の疾患の診療拠点の整備や研究、人材育成といった女性の一生を支える取り組みを進めることなども盛り込まれます。同センターについては、高市早苗首相が10月24日の所信表明演説でも個別に取り上げていました。
今後の総合経済対策の方向性に注目が必要と思われます。
R7年11月12日 産経新聞 オンラインより一部抜粋
https://news.yahoo.co.jp/articles/ea8359e150e5bf2b45a12a3688edaa0e656a50c7
