令和7年12月4日、「リハビリテーションを考える議員連盟」(会長 鈴木 俊一 議員)より、上野 賢一郎 厚生労働大臣に対し、「令和8年度予算案におけるリハビリテーション施策に係る要望書」の申し入れが行われました。
本要望書は 11月26日開催された第12回総会で承認された決議より、リハビリテーション専門職(3療法士)が地域包括ケアシステムの推進や、国民の健康寿命の延伸において極めて重要な役割を果たしているにもかかわらず、その質の確保や他職種との格差是正が大きな課題となっている現状を踏まえて提出されました。この申し入れに際し、日本理学療法士連盟を代表し、友清 直樹 会長代行が同行いたしました。
小川かつみ 参議院議員(理学療法士、リハ議連事務局長)と 上野賢一郎 厚生労働大臣
日本理学療法士協会 斉藤秀之 会長
要望書および申し入れ時の議論では、主に以下の施策の実現が強く求められました。
物価高騰に対応した持続的な3療法士の賃上げ
令和8年度診療報酬・介護報酬改定において、物価高騰に対応した大幅なベースアップ(最低でも物価上昇を上回る12%以上の賃上げ、10年で3療法士の給与を倍増)を実施することが求められています。
リハビリテーション専門職の平均年齢は36歳であり、特に25歳から35歳前の若年層の離職や、学生の充足率の低下が深刻な問題となっています。現場からは、賃金の低さが離職の一因であり、この人材流出を食い止め、10年先、20年先にわたって体制を維持していくために、賃上げが不可欠であると強く訴えられました。また、要望書に盛り込まれた賃上げ分が、医療機関・介護事業所の経営者に申請されず、現場に届かないといった過去の事例を繰り返さないよう、確実に届く仕組みを整える必要性が強調されました。
20年間変わらない疾患別リハビリテーション科の基本報酬体系の見直し
平成18年に現在の疾患別リハビリテーション料の基本報酬体系が創設されて以来、約20年間、根本的な見直しが行われていない現状があります。これに対し、各3療法士の専門性を適正に評価し、適切な報酬を得られるよう、基本報酬体系を最低限見直すことが求められました。
地域包括ケアを支えるサービス提供体制の基盤強化
地域包括ケアシステムの中核を担う訪問サービスについて、医療人材が不足している過疎地域等で持続的な提供を可能にするための制度的・財政的支援が求められました。また、訪問リハビリテーションの制度的位置づけの明確化と設置促進を通じて、地域に専門職の提供体制を作っていくことが重要であると強調されました。
リハビリテーション政策を推進する体制の整備
要望活動では、リハビリテーションが医療費の削減や国民の生産性向上に貢献する効果を持つことが、研究によって示されていると指摘されました。この効果を科学的エビデンスとして厚生労働省内で集め、共有する体制を確立するため、厚生労働省におけるリハビリテーション課の設置、およびリハビリテーション専門職の在り方検討会(仮称)を設置し、専門的知見に基づいた横断的な検討を行うことが切実に訴えられました。
さらに、日本のリハビリテーションに関する制度は、60年間の間にほとんど変わっておらず、海外と比較して遅れているという現状が指摘され、この問題に光を当てる必要性が強調されました。
当連盟は、リハビリテーション専門職の地位向上と、国民が質の高いリハビリテーションサービスを受けられる持続可能な社会の実現に向けて、引き続き尽力してまいります。
山下貴司 衆議院議員(岡山2区)
堀内詔子 衆議院議員(山梨2区)
斎藤洋明 衆議院議員(新潟3区)
国光あやの 衆議院議員(茨城6区)
田野瀬太道 衆議院議員(奈良3区)

